国立音大に行ってきました
先週は、月曜日から土曜日まで毎日、高校生の鑑賞教室「ラ・ボエーム」の合唱指揮者として活動していたが、同時に、合唱の出番が終わってからは、愛知祝祭管弦楽団「ローエングリン」のコレペティ稽古に明け暮れた。
7月 | ||
11日火曜日 | マルケ王役の成田眞さん | |
12日水曜日 | 国立音楽大学にてオルトルート役の清水華澄さん(教官室で) | |
13日木曜日 | ローエングリン役の谷口洋介さん | |
14日金曜日 | フリードリヒ役の青山貴さん | |
15日土曜日 | 再びマルケ王役の成田眞さん |
これからの予定
さて、今日(17日月曜日海の日)は名古屋に行って、13時30分から夜までローエングリン合唱団の練習。だから早朝から起きてこの原稿を書いている。8時頃には、コンシェルジュに送れる予定。家を出るのは9時頃。
明日の18日火曜日は、再び国立音楽大学に行って、清水華澄さんの補講の時間の合間の10時40分から12時10分で、華澄ちゃん及び(やはり常勤の)青山貴さん(青ちゃん)の重唱のコレペティ稽古。19日は谷口さんと成田さんの稽古
という感じだ。
7月22日土曜日は、午後から名古屋で愛知祝祭管弦楽団の弦楽器の分奏。夜はエルザ役の飯田みち代さんのコレペティ稽古。23日はオーケストラ練習。
そして次の7月29日土曜日と30日日曜日になると、いよいよ東京から歌手達を呼んで、オケ合わせとなる。
コレペティ稽古をしながら思う事は、「ローエングリン」って、ワーグナーがライトモチーフを用いて作曲し始める前の最後の作品だが、これはこれで完成された形式を持っているということ。
引き延ばされた和音の上に乗っているレシタティーヴォ(朗誦風の歌唱部分)は、インテンポで歌われる必要はないのだけれど、本当に良く書かれているので、まず書いてある音符のように歌ってから、必要に応じて崩していくのが最も近道だ。
その上で、歌手に要求される陰影やニュアンスの割合が大きいので、ここはコレペティトールの腕の見せ所だ。そのままではノッペリとしてしまう(世の中にそういう演奏が多いけれど・・・)わけである。
その意味では、ライトモチーフで痒い所に手が届くように管弦楽が表情豊かに支えてくれる方が、歌手にとっては楽なのかも知れない。
本番の8月20日まであと一ヶ月。
たっぷり稽古を積んで、きめの細かい演奏を目指します!
こんにゃく座のルドルフとイッパイアッテナ
会場で偶然秋本健ちゃん家族と遭いました
以前、この「今日この頃」で、僕が孫娘の杏樹のために、寝る前に本を読んであげる話をして、その中でも「ルドルフとイッパイアッテナ」(斉藤洋著・講談社)を2人で大いに気に入ったという記事を書いた。さらには、その「イッパイアッテナ・シリーズ」全5巻を読み切ってから、杏樹が作者の齋藤洋(本名は齋藤の表記)さんにお手紙を出したら、作者からわざわざお返事が戻ってきたなどという事も書いた。
その「ルドルフとイッパイアッテナ」が、去年、こんにゃく座によって9月にお芝居として上演されると聞いて、行きたかったのだけれど、どうしてもスケジュールが合わなくて、残念ながら見送った。
しかし、今年の夏、再び上演し、しかも全国ツワーに出掛けるという知らせを聞いて心が躍った。7月15日土曜日に2回公演と、16日は日曜日13時の1回公演とあるが、15日は、新国立劇場で「高校生の鑑賞教室ラ・ボエーム」最終公演のためにどうしても無理。でも、16日は、僕にとって珍しいオフ日だ。そこで、発売早々チケットを買って、今や4年生になった杏樹を連れて楽しみに出掛けた。
ルドルフとイッパイアッテナ表紙
こんにゃく座の素晴らしい舞台
さて、劇は間もなく始まった。出演者はたった4人のみ、伴奏はピアニスト1人。舞台上にはペンキが塗られた脚立やそれを繋ぐ板があるだけ。舞台転換というものはない。音楽は、近年合唱音楽で飛ぶ鳥を落とす勢いで有名になった信長貴富氏が手がけている。僕は合唱コンクールの審査員を何度もしている関係で、彼の作風はある程度知っているだけに、まず僕にとっては、これが一番興味があった。
風が呼ぶと 朝がこたえ 空が光りだす | ||||
西風 東風 北風 南風 朝になって めざめたら |
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明日の風はどんな色 明日の風はどんな色 |
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聞こえるだろうか 風の声が | ||||
君の名前を呼んでいる 届くだろうか この歌が |
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君の名前を呼び続ける 呼んでいる |
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詩 いずみ凜 |
ミュージカルというものの可能性
二期会で副指揮者をしていた80年代後半。二期会事務所の片隅に、ミュージカルの現場に歌手や指揮者を送り出しているマネージング部門のデスクがあった。そのマネージャーは、いろんな副指揮者達に声を掛けるのだが、芸大指揮科を出ているようなエリート達は、みんな馬鹿にして見向きもしなかった。その中で僕は、とにかく妻とふたりの子供達を食わせなければならないため、
「何でもやります!」
という感じで、二期会から派遣されてミュージカルの方に出向いていった。
すると、オペラではタブーとされているようなことが、何の制約もなく行われているのに目を見張った。たとえば、愛の二重唱をするのに、互いに床にゴロンと寝っ転がって向かい合い、頬杖をついて(客席なんか向かずに)互いの目を見つめながら歌うとかを見て、「これこそ舞台表現というものだ。ふたりで正面向いて手を広げて、なんてもう古いんだ!」
と大いに興奮したものだ。
それで、自分でもミュージカルを書いてみたいと思い、「おにころ」が生まれ「愛はてしなく」が生まれ、「ナディーヌ」が生まれた。
そのワクワク感が、またもや僕の全身を満たした!
杏樹も食い入るように見つめていて、ドラマの中にグングン引き込まれていくのが横で手に取るように分かる。滑稽な場面では誰よりも早く笑い、手に汗を握るような場面では息をひそめて・・・そして、ルドルフがイッパイアッテナのために、あんなに戻りたかった岐阜の故郷に戻るのをやめた時には、僕もそうだったけれど、そんなにもルドルフにとってイッパイアッテナが大切な存在になっていたことに、かなりウルッときているのが隣にいてよく感じられた。
そんな杏樹と一緒にこのドラマを味わうことは、この上ないしあわせなひとときだった。誰かと感動を分かち合うということは、人生にとって、あるいは人間の魂にとって、こんなにもかけがえのないことなのだと、あらためて思った。
ルドルフの会場で